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どうして歯並びが悪くなってしまうの?
~不正咬合の種類と原因~

歯並びが悪く、上の歯と下の歯がうまく噛み合っていない状態のことを「不正咬合ふせいこうごう」といいます。不正咬合は見た目が悪いだけでなく、むし歯や歯周病になりやすいなど、身体にも悪影響を及ぼすことがわかってきました。

その不正咬合、実は子どもの頃(成長期)の癖や悪い習慣が原因になっていることをご存知ですか? つまり、成長期にそれらを意識して改善しておけば、複雑な矯正装置を使用することなく綺麗な歯並びを手に入れることも可能になります。

このコラムでは、お子さまの不正咬合について詳しく知っていただき、その原因についてもご紹介いたします。トラブルを未然に防ぎ、お子さまの健やかな成長の一助になりましたら幸いです

目次
不正咬合 6つの種類
不正咬合によって起きる身体への影響
不正咬合の原因
まとめ

不正咬合 6つの種類

不正咬合は以下の3つの要素から判断します。
・上顎と下顎の大きさや位置を指す骨格
・上下の前歯の軸がどれだけ傾いているかなどの歯の問題を指す歯列
・しっかりと歯を嚙み合わせることができるかを指す機能
それぞれが深く関連しているため、どれか1つでも問題があると他の2つにも影響を与え不正咬合になる可能性が高くなります。
ここからは6つの不正咬合についてご説明します。

叢生

叢生そうせい
歯が生えている方向がバラバラで、歯並びの一部分に凹凸や重なりが出来ている状態。顎が歯の大きさに対して小さく、歯が生える十分なスペースがないことが主な原因になります。八重歯も叢生に含まれます。

下顎前突

反対咬合はんたいこうごう
上の歯よりも下の歯が外側に出てしまっている状態。「受け口」や「下顎前突かがくぜんとつ」とも呼ばれています。前歯のみで起こる場合が多いですが奥歯でも起こる可能性があり、放っておくと顔が曲がるなどの弊害もおこります。

過蓋咬合

過蓋咬合かがいこうごう
上下の歯の組み合わせが深くなっている状態。上の歯が下の歯を覆い隠しているような見た目で、下の歯はほとんど見えません。前歯で食べ物を噛み切ることができない、むし歯や歯周病になりやすいといった悪影響があります。

空隙歯列

空隙歯列くうげきしれつ
歯と歯の間に隙間ができてしまっている状態。一般的には「すきっ歯」と呼ばれています。顎の大きさに対して歯が小さい、また歯の本数が不足しているなども原因で起こる不正咬合です。歯の隙間から空気が漏れるため、発音に大きな影響があります。

上顎前突

上顎前突じょうがくぜんとつ
上の歯、もしくは上顎全体が前方に突き出している状態。一般的には「出っ歯」と呼ばれています。上の歯が前に出ていることにより、ぶつけて歯が欠けてしまったりする事故が多いと言われています。

開咬

開咬かいこう
奥歯しか噛み合わず、常に前歯の部分が開いてしまっている状態。「オープンバイト」とも呼ばれています。前歯で噛むことができず、奥歯に過度な負担がかかってしまう悪影響を及ぼします。

厚生労働省が生活習慣病の予防のために公開している健康サイト「e-ヘルスネット」によると、日本人の不正咬合はダントツで叢生が多く、次に多いのが上顎前突と空隙歯列、開咬、過蓋咬合、反対咬合と続きます。

(出典:e-ヘルスネット 不正咬合の種類と実態)

不正咬合によって起きる身体への影響

歯並びを悪いままにしておくと、身体に様々な悪影響を及ぼします。ここでは、いくつかの悪影響についてご紹介いたします。

1. 見た目が気になる
不正咬合のデメリットとしてよく挙げられる悪影響です。コンプレックスになってしまい、口を隠さないと笑えないという方もいらっしゃいます。

2. むし歯や歯周病になりやすい
歯並びが悪い状態だと、毎日歯磨きをしていてもきちんと磨けていません。凹凸のある部分や重なりがある部分には歯ブラシの毛先が届きにくいからです。ずっと同じ部分が磨けていない状態だとそこに食べかすが溜まり、歯石やむし歯、歯周病を誘発してしまいます。

3. よく噛めない
前歯は食べ物を噛み切り、奥歯で磨り潰すという、それぞれの役割があります。しかし、歯並びが悪いと、その役割をきちんと果たすことができません。口の中で食べ物をきちんと細かくすることができないと、胃腸への負担が大きくなったり、栄養がきちんと分解されず、肥満にもつながる可能性があります。

4. 肩こりや頭痛の原因にもなる
歯並びが悪いと、顔や頭、首の筋肉を左右均等に同じ力で使うことができなくなります。一部の筋肉だけをずっと強く使用していると、その影響で顎関節症、肩こり、頭痛の原因になります。

5. 歯がダメージを受けやすい
本来であればすべての歯で均等に噛む圧力を分散していますが、不正咬合の場合、一部の歯にだけ圧力がかかり、経年とともに不具合を起こる可能性が高くなってしまいます。例えば、開咬の「前歯がかみ合ってなく、奥歯だけで噛んでいる状態」だと、奥歯が必要以上に削れてしまうというダメージを受けてしまいます。

6. 滑舌や発音が悪くなる
不正咬合だと、変なところに隙間ができてしまうため、空気が漏れて発音に影響が出ることもあります。また、正しい舌の使い方が難しくなるため、滑舌も悪くなります。

不正咬合の原因

不正咬合になってしまう原因として、遺伝的要因・先天的要因・環境要因の3つが挙げられます。

遺伝的要因 顎や歯の大きさやバランスなど、親からの遺伝するもの
先天的要因 先天性欠如(もともとの歯の数が足りない)や過剰歯(もともと歯の数が多い)など
環境要因 舌の位置、姿勢、呼吸、咀嚼、嚥下、指しゃぶりや爪噛み、舌癖、歯ぎしり、片噛み、頬杖、うつ伏せ・横向き寝など
5つの要因

現代の子どもたちは、これら3つの要因のうち環境要因よって不正咬合になっていることが多く、特に「舌の位置」「姿勢」「呼吸」「咀嚼」「嚥下」の5つの要因が大きく関わっていることが分かってきました。

1. 舌の位置
舌は本来、上顎の裏側(口蓋)についているのが正しい位置です。リラックスしている状態や無意識でも、舌が上顎から離れていたり、舌の先が歯に触れたりすることはありません。
上顎の歯並びは、舌の力(図1 白矢印)と頬の力(図1 黒矢印)に挟まれ本来の正しい歯列になります。また上顎の歯並びと舌の形はほぼ一緒になります。
しかし、舌が上顎から離れている状態だと内側から支える力がなくなるため、頬の力で歯列は内側に押し込められてしまい不正咬合が起こります(図2)。この不均衡ともいえる状態で矯正治療を行なっても再度歯列が崩れる可能性が高くなります。
舌の位置

2. 呼吸
呼吸には「腹式呼吸」と「胸式呼吸」の2つがあります。
腹式呼吸は、横隔膜を使った呼吸で、肺が下に向かって広がっていきます。姿勢を良くし、お腹を膨らませながら鼻から息を吸い込み、お腹を少し凹ませるように息を吐き出すのが腹式呼吸です。
一方、胸式呼吸は、胸や肩、首の筋肉を使った呼吸で、肺が横に広がっていきます。肩を上にあげながら息を吸い込み、肩を下げながら息を吐き出す呼吸です。口を開けて、猫背をつくった状態で呼吸をしてみてください。自然と肩が上下する胸式呼吸になります。
現代の子どもたちは胸式呼吸しか出来ない子どもが増えています。胸式呼吸と口呼吸はセットになってることが多く、不正咬合だけでなく姿勢の悪化やむし歯のリスクも高くします。

TIPS
本来ヒトは鼻呼吸を行なっています。鼻呼吸は鼻毛で空気中の汚れを除去し、鼻腔びくうで湿度と温度を調整、咽頭いんとうでウィルスを除去しています。
鼻呼吸は身体にキレイな空気を取り込むように出来ていますが、口呼吸では空気がダイレクトに身体に入ってくるため、身体がアレルギー反応を起こしたり、扁桃腺へんとうせんやアデノイドという鼻と喉の境目付近が腫れることがあります。また口呼吸は鼻炎を悪化させることがあり、鼻炎が悪化すると常に口呼吸になってしまう悪循環も起こします。
口呼吸の改善には、お鼻で呼吸する意識と腹式呼吸が重要です。

3. 姿勢
「姿勢が悪い」と聞いて、最初に思い浮かべるのは「猫背」ではないでしょうか。猫背は、背中が丸まり頭が前に出てしまっている状態のことです。頭が前に出ると、肩甲帯けんこうたい(肩甲骨・胸骨・鎖骨・上腕骨と、これらを連結させる筋・靭帯のこと)と顎、頚椎けいついを繋ぐ筋が大きく伸びてしまいます。
成長期の子どもの場合、猫背になってしまうとその不自然な状態でバランスをとり、いつしか身体だけでなく口周りの骨や歯にも影響し、不自然な形が定着します。
 不自然な形で成長した口周りの骨や歯は頭の重心のズレに繋がります。この重心のズレは、顔面の筋肉を下方へ引っ張ります。口が開きやすく、肩が内側に入るため胸式呼吸を引き起こします。
舌の位置

4. 咀嚼
下顎の歯並びは「顎の動かし方」と「噛む回数」が大きく影響していることが分かっています。
固い木の実を食べていた縄文時代のころと比べ、現代人が食べるものはとっても柔らかくなっており、その分咀嚼回数も少なくなっています。子どものころからよく噛むことを覚えておかないと、きちんとした食べ物の磨り潰しが行えず、下顎を十分に発達させることができません。
また近年、咀嚼をうまく行えないことから食べ物を水分で流し込むように食べる子どもたちも見受けられるようになりました。流し込み食べは、噛む回数が劇的に減り顎の成長を妨げるだけでなく、噛むことによって分泌される唾液の量も減少します。唾液はお口の中の汚れを落とす効果もあるため、分泌量が少ないとむし歯のリスクも上がります。

5. 嚥下えんげ
嚥下とは、物を飲み込み、口から胃へと運ぶ一連の動作のことをいいます。食べ物だけでなく、唾液などを呑み込むことも嚥下です。そのため、嚥下運動の回数は1日約1500~2000回で、平常時が2〜3分に1回、食事時が15〜20秒に1回くらいとされています。
嚥下は、舌を上顎につけて口の中の圧力を低くして行うのが正しいかたちです。
しかし舌が正しい位置にない人は、口唇や口輪筋(口周りの筋肉)などに力を入れ、口の中の圧力を高くして嚥下します。
本来使わないはずの口唇や口輪筋に力が入ることから、歯列は外側から内側に力がかかり、押し込められることから不正咬合が起こります。

まとめ

不正咬合は、その原因となる環境要因などを知り防ぐことで、お子さまを健全な歯並びに導くことができます。
もしも不正咬合になっている場合は、その原因を特定し改善することで複雑な矯正装置を使用することなく健康な歯並びに導ける可能性が高くなります。

当院では幼少期にお子さま本来の健全な口腔環境を獲得することを重要と考え、治療だけでなく、様々な取り組みや情報発信をおこなって参ります。
お子さま、そしてご家族さまの一助となりましたら幸いです。