~ 改善方法と予防のポイント ~
お子さまが口をポカンと開けている姿を見かけたことはありませんか?
実は、この「口呼吸」は歯並びや咬み合わせに大きな影響を与えることが分かっています。特に成長期のお子さまにとって、口呼吸は不正咬合の原因となり、将来的な歯並びの乱れを引き起こす可能性があります。
本来、人間の呼吸器官は「鼻」です。鼻から呼吸することで、空気中のウイルスやカビ、ダニなどの異物をフィルタリングし、適切な温度と湿度に調整された空気を体内に取り込むことができます。しかし、口呼吸では、こうした防御機能が働かないため、免疫力の低下や様々な健康問題を引き起こすことがあります。
矯正歯科の視点から見ると、口呼吸は歯並びや顔の成長発育にも深刻な影響を及ぼします。この記事では、口呼吸が歯並びに与える具体的な影響と、改善方法・予防策について詳しく解説します。
口呼吸が歯並びに悪影響を与える理由は、口の内側と外側からの力のバランスが崩れることにあります。
通常、鼻呼吸をしている時は口を閉じているため、舌は上顎の天井部分、「スポットポジション」と呼ばれる位置に緩やかに密着しています。この状態では、舌が口の内側から上顎に自然な力をかけ、歯列のアーチを広げる働きをします。同時に、口を閉じている唇や頬の筋肉が外側から緩やかに力を加えることで、内側と外側の力がバランスを取り、歯並びを正しい位置へと導くのです。
ところが口呼吸をしていると、舌は上顎から離れて低い位置に下がってしまいます。
舌が下がると、口の内側から上顎にかかる力が失われ、頬の筋肉からの圧力が優位になります。その結果、歯列が内側に押され狭くなり、歯並びが乱れてしまうのです。また、常に口を開けているため、唇からの力も歯に加わらず、力のバランスが大きく崩れてしまいます。
口呼吸によって引き起こされる歯並びの問題には、いくつかの代表的なパターンがあります。
上顎前突(出っ歯)は、上の前歯が前方に突出している状態です。前に出た歯や舌が上唇を押し出してしまうため、自然と口が開いて口呼吸になってしまいます。飛び出した前歯により口が閉じどらくなり、さらに口呼吸が悪化するという悪循環に陥ります。
下顎前突(受け口)は、下顎が上顎より前に出ている状態です。舌で下の歯だけが前に押されることで、上下の歯列の大きさが合わなくなり、口が閉じにくくなるため口呼吸になってしまいます。
開咬は、歯を咬み合わせた時に前歯の部分で上下に隙間ができてしまう歯並びです。意識をして口を閉じようとしても間に指や舌がはさまるほどの隙間ができるため、食べ物を咬み切りどらくなります。幼い頃の指しゃぶりや口呼吸などの舌癖により引き起こされることが多いです。
これらの不正咬合は、見た目の問題だけでなく、食べ物をしっかりと咬むことができず、歯を支える顎の骨にも過剰な負荷がかかるため、将来的に歯の寿命を縮めてしまうリスクがあります。
口呼吸を引き起こす原因は人によって様々ですが、大きく分けて3つのパターンがあります。
口呼吸になる原因で最も多いのが鼻どまりです。
風邪や花粉症などが原因で鼻どまりが起きると、鼻から空気を吸い込むことが難しくなるため、必然的に口呼吸になってしまいます。鼻詰まりが治っても、口呼吸の癖が抜けずにそのまま口呼吸を続けてしまうケースも考えられます。
また、アレルギー性鼻炎などが原因で日常的に鼻がつまっている方は、口呼吸をしている確率が非常に高くなります。この場合には、鼻呼吸が可能となるように耳鼻科での診察と治療が優先されます。
出っ歯や受け口などの歯並びの問題により、物理的に口が閉じにくいために口呼吸となってしまう場合があります。
この場合には、歯並びの治療(矯正治療)を先行して行い、それと並行して口を閉じる訓練を行います。矯正治療で歯並びを整えることで、口が閉じやすくなり、鼻呼吸への移行がスムーズになります。
歯並びの異常がないか軽度であり、鼻呼吸が可能であるにもかかわらず、習慣的に口を開けて息をする場合があります。
口の周辺にある筋肉の衰えも、口呼吸になる原因のひとつです。口の周りには、口輪筋や舌筋などの筋肉があります。
本来、人は生まれたときから鼻呼吸をしており、口はしっかり閉じています。しかし、生後1年間の身体の発達や生活環境の影響によって、口呼吸(口ポカン)が生まれることがあります。たとえば、抱っこの仕方や寝かせ方、授乳の方法や離乳食のあげ方など、日常のさまざまな環境が口呼吸につながる要因になり得ます。
そのため、乳幼児期から正しい環境を整えることがとても大切です。うえの矯正歯科では、口ポカンを防ぐための環境どくりに関する教室を定期的に開催しています。口輪筋が弱くなる原因としては、こうした幼少期の習慣のほか、加齢による衰えなども挙げられます。
口呼吸の癖が幼い頃に定着してしまうと、成人してからも続いてしまうことがあります。現代では、硬い物を前歯で咬み切ることが少なくなっており、またシャボン玉や口笛を吹く、風船ガムを膨らませるといった口遊びもあまりしなくなりました。
つまり、昔と比べて口輪筋を鍛える機会が減っているといえます。
口呼吸は歯並びだけでなく、全身の健康にも様々な悪影響を及ぼします。
口で呼吸をすることによって、空気中に潜んでいるカビやダニ、ウイルスを次々と体内へ直接取り込んでしまいます。その結果として免疫力の低下を引き起こし、免疫機能の低下や、口腔内の乾燥による虫歯・歯肉炎リスクの上昇が指摘されています。
口が乾燥するので唾液の作用を受けられないのも重大な問題です。
唾液の持つ抗菌作用は、病原菌やウイルスに対する免疫力を高めます。ほかにも唾液は粘膜保護や粘膜修復、歯の再石灰化を促しますが、唾液が枯渇すると、これらの作用がすべて受けられません。口呼吸は細菌やウイルスなどの異物、温度調節のされていない外気をダイレクトに吸うので、風邪やインフルエンザ、虫歯や歯肉炎になりやすいという報告もあります。
さらに、口呼吸をしている子どもは睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。睡眠中も口を開けているので、仰向けで寝ると下顎や舌が下がって気道がふさがり、呼吸が止まってしまうのです。
口呼吸の改善方法は、その原因によって異なります。
歯並びが影響して口呼吸になってしまう場合は、自力で改善するのは困難です。矯正治療によって歯並びを整えることで、口が閉じやすくなり、鼻呼吸への移行がスムーズになります。
当院では、お子さまから大人まで幅広い矯正治療に対応しています。インビザラインなどのマウスピース矯正(アライナー矯正)をはじめ、ワイヤー矯正、部分矯正など患者さまの歯並びやライフスタイルに合わせた治療方法を提案しています。
小児矯正では、不正咬合を予防するための取り組みを重視しています。歯並びが悪くなる原因には、口呼吸、舌の位置、姿勢、飲み込み方などの生活習慣が関係している場合があります。こうした口腔機能の問題に早い段階でアプローチすることで、将来的な歯並びの乱れを予防できる可能性があります。
習慣性口呼吸の場合には、歯科において口を閉じて鼻呼吸を行うための訓練(口唇閉鎖訓練)を行います。
舌を上に持ち上げるためには「舌筋」という筋肉が使われます。舌筋が衰えると、舌が低い位置に落ちてしまい、口呼吸になりやすくなります。舌先をスポットにあてたまま唾液を飲み込む訓練など、段階的なメニューを通して舌の位置を正すほか、マウスピース型の口腔筋機能トレーナーを用いることもあります。
月に1度歯科で訓練法の指導を受けて、自宅での訓練を毎日実施します。熱心に取り組んだ場合、半年ほどで効果が現れてくることがほとんどです。
「あいうべ体操」は、口輪筋を鍛えるための簡単なトレーニングです。
「あー」と大きく口を開け、「いー」と口を横に広げ、「うー」と口を前に突き出し、「べー」と舌を出します。この一連の動作を1日30回程度繰り返すことで、口周りの筋肉が鍛えられ、口を閉じる力が強くなります。
お子さまと一緒に楽しみながら取り組むことで、口呼吸の改善につながります。
日常生活の中で、意識的に鼻呼吸を心がけることも大切です。
食事の際には、前歯でしっかりと咬み切る動作を取り入れることで、口輪筋を鍛えることができます。また、硬い食べ物を積極的に取り入れることで、咀嚼筋や口周りの筋肉を鍛えることができます。
睡眠中の口呼吸が気になる場合は、口を閉じるためのテープを使用する方法もあります。ただし、鼻どまりがある場合は、まず耳鼻科での治療を受けることが優先されます。
成長期のお子さまにとって、口呼吸の改善は非常に重要です。
慢性的な口呼吸が歯並びや顎の成長に影響を及ぼすこともあります。すなわち、一度口呼吸の癖がついてしまうと、歯並びが悪くなり、さらに口呼吸がひどくなり…、と悪循環に陥り自然治癒は難しくなってくるのです。
当院では、小児矯正において不正咬合を予防するための取り組みを重視しています。口呼吸の改善や口腔機能のトレーニングを行うことで、将来的な歯並びの乱れを予防できる可能性があります。
また、地域の子どもたちの口腔環境を守るために、保育園や地域との連携による歯並び予防の取り組みにも力を入れています。歯並びの問題は小さい頃の生活習慣や環境の影響を受けることが多いため、地域全体で子どもの口腔環境を守る取り組みが重要だと考えています。
赤ちゃん教室なども開催しており、早い段階から口腔機能の発達をサポートする取り組みを行っています。
口呼吸は、歯並びや咬み合わせだけでなく、全身の健康にも大きな影響を与えます。
特に成長期のお子さまにとって、口呼吸は不正咬合の原因となり、将来的な歯並びの乱れを引き起こす可能性があります。早い段階で口呼吸の原因を特定し、適切な改善方法を取り入れることで、健康な歯並びと口腔機能を育むことができます。
矯正治療は治療期間や費用など不安を感じる方も多いため、当院では矯正の無料相談を行っています。歯並びや咬み合わせの悩み、マウスピース矯正ができるかどうか、部分矯正で治療できるかなど、気になることがあればお気軽にご相談ください。
お子さまの口呼吸が気になる方、歯並びについて相談したい方は、ぜひ一度当院にお越しください。患者さま一人ひとりの骨格や歯並び、咬み合わせを総合的に診断し、適切な治療方針を提案いたします。
健康を守り育む、つくばの頼れる歯科医師として、皆さまの口腔環境をサポートいたします。