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『咀嚼の重要性について』

「ご飯はよく噛んで食べましょう」。皆さんが子どもだった頃、保護者の方に1度はこのような指導を受けたことがあるでしょう。あるいは今まさに、保護者としてよく噛んで食べるよう、お子さまにご指導されているかもしれませんね。

言わずもがなよく噛むこと、咀嚼をちゃんとすることは大切なこと。一方で何故咀嚼が大切なのか皆さんはご存じでしょうか。
「ダイエット効果がある」「消化吸収率が上がる」など断片的な情報を知っている方はいらっしゃると思いますが、咀嚼のもたらす効用はそれだけに留まりません。詳しくはコラムの中身でご紹介しますが、よく噛むことはストレスが緩和されるほか、認知症予防にもつながるのです。

また、正しい咀嚼の方法を身に付けることは、お子さまの脳の発育にも大きくかかわります。
今回のコラムでは咀嚼のもたらす意外な健康効果はもちろん、正しい咀嚼の方法、お子さまに指導する際に気を付けたいことを併せてご紹介していきます。

目次
POINT:1 咀嚼とセロトニン~噛めば噛むほどにストレスフリーに?~
POINT:2 咀嚼がアルツハイマー型認知症の予防につながる!!
POINT:3 正しい咀嚼の方法を子どもの頃から身に付けよう!
まとめ

POINT:1
咀嚼とセロトニン
~噛めば噛むほどにストレスフリーに?~

咀嚼とは、食べ物を唾液と混ぜ合わせながら噛み、柔らかく小さくして飲み込みやすい形にすること。改めて言うまでもなく、私たちが日常的に欠かさずおこなっている行為です。

実は咀嚼にはさまざまな健康効果があります。
たとえば、虫歯・口臭予防。噛むことで口の中に唾液が分泌されますよね。唾液には食べかすやばい菌を洗い流してお口をきれいにする効果があるので、結果的に虫歯や口臭のリスクが減るのです。ちなみに唾液の成分のなかには、免疫効果のある抗菌物質や抗体が含まれています。とある研究で、安静時の唾液分泌量が多い方は風や特定のウイルス疾患にかかりにくいという結果が出ているほか、唾液が含む酵素「ペルオキシダーゼ」には、食べ物のなかの発がん性物質が作り出す活性酸素を除去する働きがあることがわかっています。よく噛んで唾液をたくさん分泌することは、健康上とても大切なのですね。

咀嚼の数ある健康効果のなかでも、今回はストレス抑制効果にスポットを当てましょう。

咀嚼=ストレス抑制。この方程式を成立させるのが「セロトニン」です。
セロトニンとは別名幸せホルモンとも呼ばれる脳内伝達物質で、精神の安定や感情・気分のコントロール、頭の回転をよくして直観力を上げるなど、脳を活発に働かせる力があります。逆に言えば、セロトニンが不足していると、ストレスを感じやすくなるなど精神面のさまざまな不調につながるというわけですね。

このセロトニンは日光を浴びると脳内で分泌されると言われていますが、意識的に分泌をうながす方法として取り組みやすいのがリズム運動です。リズム運動の例として、ウォーキングやスクワット、自転車こぎなどがあげられますが、そのなかでも誰もがすぐに取り掛かれるのが咀嚼です。運動や自転車になかなか時間が取れない方でも、ご飯は食べますよね。朝・昼・夜の食事の際に、意識的に噛む量を増やすことでセロトニンが分泌され、日頃のストレスが緩和されるかもしれません。そう考えると、毎日の食事の楽しみも増えますね。

咀嚼に期待できる主な健康効果
虫歯・歯周病予防
滑舌・発音の改善
味覚の発達
ダイエット効果
ストレス緩和
認知症予防
がんなどの成人病のリスク低下など

POINT:2
咀嚼がアルツハイマー型認知症の予防につながる!!

咀嚼はアルツハイマー型認知症の予防にもなると言われています。
そもそもアルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞が減り、脳が小さく萎縮したことが原因で発症します。一方で咀嚼することは神経細胞を活性化して、脳の血流量を増やしますので、自ずと認知症の予防につながるというわけです。

しかし、これは言い換えると咀嚼をちゃんとできないと、認知症のリスクが高まるということでもあります。

ある研究でも、介護認定を受けていない65歳以上の健康な人のなかで、歯がなく入れ歯も使用していない人は、20本以上ある人と比べ認知症の発症リスクが1.85倍高くなるという結果が出ています。これは歯の本数が減り咀嚼がままならなくなり、脳の血流が減るほか、食べ物の摂取量が減り低栄養状態に陥ってしまうためだとされています。ご年配の方で歯の本数が20本あるかどうか。これが認知機能の健康を維持する上で、必要な咀嚼をするための大事な基準にもなるわけです(※1)。

ちなみに1989年から厚生労働省(当時は厚生省)と日本歯科医師会は「8020(はちまるにいまる)運動」という、80歳になっても20本以上の歯を保つための活動をおこなっています。8020運動が開始されて約35年、その成果は如実に表れています。1989年当時は80歳以上で20本以上の歯のある人は約7パーセントでしたが、2016年の時点では51.2パーセントまで上昇。歯の健康状態が良いご年配の方が増えていることは、当院としてもうれしいかぎりです。

※1 歯の代わりに入れ歯を利用されている場合は、歯数が20本以上ある場合と認知症の発症リスクに差はありません。

POINT:3
正しい咀嚼の方法を子どもの頃から身に付けよう!

~咀嚼はお子さまの脳の発達に影響する?~

ここまで咀嚼がもたらす健康効果についてご紹介してきました。しかし、ただ闇雲に食べ物を噛めば良いというわけでもありません。とくにお子さまが正しく咀嚼できていないと、その後の人生を考えると大きなデメリットとなります。

というのも、お子さまが正しい方法の咀嚼ができていないと、「不正咬合(ふせいこうごう)」になってしまう可能性があるのです。
不正咬合については当院のコラムでも何度か言及していますが、端的に言って歯並びが悪く、上の歯と下の歯がうまく噛み合っていない状態のこと。虫歯・歯周病になりやすくなる、滑舌・発音が悪くなるなど、さまざまな弊害があります。また、顎が上手く成長しないことで、審美面でも歯並びや顔の形、唇などの口元の形に悪影響を及ぼします。

また、咀嚼はお子さまの脳の発育にとっても重要な役割を担っています。
ここで論点に上がるのが口呼吸です。実はオーストラリアの研究で、口呼吸をしている子どもの知能指数は年に5~10低下するという結果が出ています。これは何故かと言うと、口呼吸は鼻呼吸とくらべて酸素の供給量が少ないため。酸素はその25パーセントが、脳で消費されていると言われています。酸素の重要度は脳の成長が著しいお子さまにとってはなおさら。口呼吸が習慣化していることが、お子さまの脳の発育に良くないことは明らかです。

そして、お子さまが正しい方法で咀嚼できていないことは、めぐりめぐって口呼吸を誘発し、脳の発育の妨げになります。
その理由を順に説明しましょう。まず、お子さまの咀嚼の方法に問題があった場合、食べ物を噛んだりすり潰したりすることが不徹底となるので、顎も未発達になってしまう可能性が増します。顎が正しく発達しないとそれに応じて鼻腔も広がらず鼻呼吸を妨げ、結果、口呼吸が増えて……という流れで、咀嚼はお子さまの脳の発育にかかわってくるのです。また、口呼吸は鼻呼吸よりも細菌やウイルスを吸収しやすく、さまざまなアレルギー症状や風邪のリスクを高めてしまいます。お子さまの健康全般のために、口呼吸は直した方が良いでしょう。

以上のように、咀嚼を正しくおこなわないと、お子さまにさまざまなリスクが生じることがご理解いただけたと思います。最後に正しい咀嚼の方法とはどのようなものなのか。また、お子さまと大人の方が正しい咀嚼をする際のポイントについて解説していきます。

~正しい咀嚼の方法~

咀嚼の理想の回数は一口30回ほど。それを前提に、以下の注意点を意識ながら順におこなってください。

1. 前歯で食べ物を噛み切る
よく前歯の代わりに奥歯で噛み切る方がいらっしゃいますが、これは正しい方法ではありません。そもそも奥歯の正式名称は臼歯。④の工程にあるように、すり潰すことが本来の役割です。また、奥歯で食べ物を噛み切ることを続けていると、痛みが生じたり歯が割れたりすることもあるので注意してください。

2. 口を閉じる
マナーという点はもちろん、口を閉じて食べ物を噛んだ方がより多く唾液が分泌されます。また、口を開けたまま食べると、食べ物が前にたまりやすく奥歯を上手に使いにくくなります。さらに口を開けたままだと飲み込む際に舌が前歯を押し、上の歯を押す癖があれば出っ歯に、下の歯を押す癖があれば受け口になりやすくなります。

3. 舌で少しずつ食べ物を口の奥に運び、歯全体で咀嚼する
このとき気を付けたいのは、左右バランス良く歯を使うこと。特定の歯ばかりを酷使してしまうと、虫歯の原因となる他、噛み合わせがズレる原因となります。

4. 奥歯ですり潰す
奥歯の③と同様左右の歯をバランスよく使うことを心がけてください。奥歯でしっかり食べ物をすり潰すことができないと、噛むのに時間がかかる他、クチャクチャと音が出てしまいます。

5. 飲み込む
飲み込む(嚥下)際は以下のポイントができているかチェックしてください。

・舌の先が上の歯の付け根付近についている
・唇は軽く閉じていて、飲み込む際口周りが力んでいない
・奥歯がかみ合っていて、上下の歯の間に舌が入り込んでいない
・舌の前方から後方へ、順番に口蓋に吸い付く
・舌の奥が喉の奥と接触する

その他、食事の際は猫背で前傾姿勢にならないように注意してください。食べ物が噛みにくくなったり、飲みにくくなったりする他、食べ物が誤って気管に入る誤嚥のリスクも高まってしまいます。

~お子さまが咀嚼する際の心得~

お子さまにとって何より大切なのは、たくさん噛む練習をすることです。
お子さまの場合、上手に噛む技術がないことが問題となります。そのためにも噛む回数を増やして、たくさん練習することが正しい咀嚼方法を身に付けるために大切です。とくに今のお子さまたちは咀嚼の練習不足が目立ちます。当院で出会ったお子さまのなかにも噛む回数が少なく、上手く噛めず飲み込めない子がいらっしゃいます。噛むことはボールを投げることなどと同じです。何回も練習することで、上手に噛む技術が身に付けて行きましょう。

~大人の方が咀嚼する際の心得~

まず大人の方は上記で紹介した正しい咀嚼の方法を意識してみましょう。その上で、前歯で食べ物を噛み切っていない、奥歯を使えていないなどの問題点があれば改善してください。また、食べ物を水やお茶で流し込む癖がある方は、それを止めて噛む回数を増やしてみてください。

噛む回数を増やすという意味では、ガムを噛むことも有効です。ただしコンビニなどで販売しているガムには糖が含まれているので、歯科医院で販売しているような代用甘味料やキシリトール入りのガムを噛むと良いです。なお、皆さんのなかには「噛む力を強くした方が良いのか?」と考える方もいらっしゃると思いますが、それよりもある程度の噛みごたえで回数を増やした方が効果的だと当院では考えます。

まとめ

今回のコラムでご紹介したように、咀嚼は全世代の方にとって、思いがけず重要な意味を持った行為です。少し大げさな言い方ではありますが、咀嚼は心身の健康全体を司っているとも表現できるでしょう。
歯の矯正治療は歯並びをきれい整えることだけではなく、しっかり咀嚼ができる歯並びにするという機能面での効果も期待できます。また、正しい方法で咀嚼する習慣があると、審美的な観点からも顔の成長をうながすことが可能です。小さい頃から正しい歯並び、正しい咀嚼を身につけると、お子さまは美しい顔立ちでキレイな歯並びを身に付けることができるのです。うえの矯正歯科は今後も積極的にそのサポートに取り組んでまいります。